OKANOのトリクミ
装置産業 DX構想 バルビキタス

装置産業を内側から革新する

VQ事業構想

VQ(バルビキタス)事業は装置産業のDXを後押しするOKANOの新事業だ。競争力を失いつつある国内装置産業。テクノロジーが進化する中、装置産業ではデジタル技術革新の恩恵をタイムリーに享受しきれていない。これを打破するためにOKANOは今、装置産業全体のDXを推進する事業に取り組んでいる。発電所や石油化学といった大規模プラントを皮切りに、町工場規模のものづくり企業まで、デジタル武装により本質的な競争力を輝かせようとするのがVQ事業の構想だ。本稿では事業部長の堀口がVQ事業構想について語る。

堀口 優
YU HORIGUCHI

2004年岡野バルブ入社。入社以来、営業部門に所属。バルブ製造チーム、メンテナンスチームと連携しながらクライアントに直に接することで、悩みや課題を発見し、解決に導いてきた。2020年よりVQ事業部長としてDX事業を牽引している。

VQ(バルビキタス)とは

OKANOが今、既存事業の枠を超えて進めている新事業のひとつがVQ事業だ。そもそも聞きなれない言葉だが、VQとは一体何なのだろうか。

堀口:「VQとはユビキタスとバルブを掛け合わせた当社の造語「バルビキタス」の略称です。当社は発電所における重要機器である、主蒸気用高温高圧バルブを開発から素材、完成品製造、メンテナンスまでおこなっており、メンテナンスにおいては他社製品までを手掛けています。
これらに関する情報をデジタルに一元管理し、社内はもとよりお客様やその協力企業まで、いつでもどこからでもアクセスできるようにする、更にはそれらデータベースを利活用して従来のアナログの業務をAIにより半自動化させようというのがVQの構想で、情報システムであり、プロジェクトの名前でもあります。そして、将来的には各種プラントや工場の構成機器すべてを一元管理できるように拡張していくという構想ももっています。」

まずは自社にノウハウがあるバルブから始め、その他機器、プラントや工場全体へと拡張する。固有性ゆえに進んでいないプラントや工場の運転、保全の高度化、省力化、これをデジタルの力で実現し、装置産業がよりクリエイティブな業務に注力できる環境を整える。VQはそれを将来的にサポートするインフラになるという構想だ。

実行と挫折の
軌跡

OKANOは現在進行形で情報システム「バルビキタス」の構築を進めている。しかし、VQ事業部としての事業構想は当初に比べて大きくカタチを変えているようだ。

堀口:「VQ事業部は当初、発電所へ向けたバルビキタスの導入と当社特許保有のバルブデジタル診断技術の展開を目的として発足しました。従来型のバルブメンテナンスは現在の当社中核事業のひとつです。しかし、いつまでもデジタル化の潮流と無縁ではありませんし、そうあるべきでもない、ならば自らが変革の旗手となろうという構想でした。しかし、実際に展開してみると、想定したよりも圧倒的に遅いスピードでしか導入が進みませんでした。当社の至らなかった点も大きな要因ではあったと認識していますが、“業界の性質”という壁は厚く高い、というのが1番の印象です。」

国内装置産業は、確実性をもっとも重視してきた。停電をおこしてはいけない、プラントを止めてはいけない、不良品を出してはいけない、事故をおこしてはいけない。ジャパンクオリティとよばれる品質の源泉ではあるが、ひとたびやり方が確立されるとそのやり方を変えるリスクをとることを避けてしまう。現状のやり方で支障がないのだから、わざわざ変えるのはリスクだし億劫だといった様子だ。そのような中で発電所からすれば重要ではあるものの多々ある機器のうちのひとつに過ぎないバルブに関する業務だけを根本から変える決断、これはなかなかされるものではなかった。

堀口:「最初に出た案は、バルブだけではなく発電所すべての機器を一元管理できる情報システムを構築しようというものでした。しかしすぐに、ちょっと待てよ、と立ち止まりました。機器ごとに性質や管理方法、管理項目が違う中で、それらすべてを網羅した情報システムの開発にどれだけのコストと労力と時間がかかるのか。長くウォーターフォール型の文化が重んじられてきた業界で、アジャイル型の使いながら拡張するという開発方法を採用してもらうことも難しい。この案はすぐに暗礁に乗りあげました。」

業界のDX気運を
高める

装置産業に属する企業も、トップから末端まで、本社から現場まで、個としては多くがDXの必要性を認識している、しかし組織単位になるとDXはまだまだ未来の話でその動きは緩やかで、国外や他産業との差は拡がる一方だ。OKANOがたどり着いたのは、まずは業界全体のDX・デジタル化への気運を高めるというものだった。

堀口:「ファーストステップは、デジタル化の恩恵を実感してもらうことです。世の中にはさまざまなテクノロジーやサービスが存在しますが、そもそも我々の業界はそれらを把握していません。また、存在は認識していてもどう自分たちの業務に利用するかまで至りません。我々はまずそこを補完して、設備産業とデジタル技術を繋ぐ架け橋になりたいと考えています。
解りやすくデジタル化の恩恵を実感する。そしてDXを“しなければいけないからする”ではなく“したいからする”に変えていく。業界の気運を高めるステップを踏んで初めて、本質的なDXに進めると思います。」

VQ事業が今取り組んでいるのは電力会社を始めとした大規模プラントのデジタル化支援だ。日本を代表するようなプラントといえどもいきなりすべてをDXするのは困難だ。DX概念を踏まえつつも、まずは現場の具体的な課題をデジタライゼーションによって解決する。

「今はメンテナンスチームと連携して大規模プラントへのデジタル化ソリューションを提案しています。我々はメンテナンスを通じて、プラントの中で仕事をしてきたので、プラント内部や実情を熟知しています。そのため、現場が抱える課題を誰よりも深く理解できるという点は強みだと思っています。」

そして、現場レベルのデジタル化を推進する過程で、OKANOはクライアントのより高次の課題を見つけ出す。クライアントに伴走しながら課題解決してきたOKANOのお家芸だ。そのうえでDXを更に一歩進めていく。

我々以外に誰がやる

依然として相当な経済規模をもつ国内設備産業、多くのITベンダーがこの産業にアプローチしているであろうにも関わらずDXはあまり進展していない。この難易度の高い課題になぜOKANOは取り組むのだろうか。

堀口:「我々は100年に渡り製造業を営むとともに、発電所という大規模プラント内部でメンテナンス実務に携わってきました。設備産業における、実態、実情、空気、痛みといったものを当事者として肌で理解し、時にはユーザー以上にユーザー目線に立てる存在です。また、当社は数年前よりDXの旗を掲げ、それから試行錯誤を繰り返し、多くの知見、パートナー、ネットワークを得て、今も日々それは拡大しています。我々以外に誰がやる、と自負していますし、何よりもOKANOが100年間魂を注いできたこの業界をこのままで終わらせやしないぞという使命感が我々の原動力です。」

プラント、工場においては構成機器のひとつに過ぎないバルブ。そのメーカーであるOKANOが装置産業全体のDXへ向けて挑戦を始めている。