立ち向かえ!
夢と現実。
ロボット開発で社会課題に挑む
ロボットアニメ『ブルバスター』を題材に、北九州市、OKANOとの産学官連携による「リアルブルバスター開発プロジェクト」が始動する。『ブルバスター』とは、北九州市を舞台にした経済的に正しいロボットアニメ。主人公の沖野は、技術者兼パイロットとして、賃料、燃料費、保険料、残業代、使用する弾丸1発に至るまで無駄にできないという厳しいコスト管理に悩まされながら、社長の田島鋼二ら同僚たちと巨獣駆除に挑む。
本プロジェクトでは、沖野のような技術者を募り、製造業を中心とした地元企業、大学、高専などの教育機関、行政と産学官で連携しながら実際にロボット開発を行う。作中に登場するような大型ロボットではなく、社会問題を解決できるロボットを形にすることがミッションである。その過程を共有していくことで、北九州、そして日本の製造業に希望を与えることを目指している。
原作を手掛けた中尾浩之さんと共に、作品に込めた想いや、プロジェクトへの期待を語りあった。
中尾 浩之
HIROYUKI NAKAO
映像監督・脚本家/『ブルバスター』原作
日本大学芸術学部放送学科卒。実写とCGを組み合わせた独自のスタイル”ライブメーション”による「スチーム係長」が’98年のMTV Station-IDコンテストにてグランプリを受賞。’04年Original Short Film「ZERO」がSHORT SHORTS FILM FESTIVALにてグランプリ他トリプル受賞、多数海外映画祭に招待・ノミネート。代表作に「タイムスクープハンター」シリーズなど、実写・アニメのジャンルを問わず、監督・脚本を多く手がける。
未来の沖野を探せ!
リアルブルバスターオーディション
募集要項
- 日本に在住する2024年3月31日時点で16歳以上30歳未満の方 ※応募の時点で18歳未満の方は保護者の同意が必要となります。
※海外滞在中の方でも、日本に住民票があればご応募可能です。ただし、二次審査を通過された場合、2024年内実施予定の対面審査のため一時帰国していただく必要がございます。
最終審査に参加いただく際の国内での交通費は主催者側で負担いたしますが、海外のご滞在先から入国までの渡航費等は応募者のご負担となります。 - 性別・学歴・職歴・国籍は問いません。 学生でも社会人でもやる気のある方はどなたでも歓迎!
- ロボットで解決したい社会問題が明確にある方
- リアルブルバスタープロジェクトとしてメディア、オウンドメディア(ホームページ、YouTube、SNSなど)の露出が可能な方
応募締切
2024年8月20日 23:59
追い求めたものが
クリエイティブの
コアになる
『ブルバスター』のアニメ化決定のタイミングでOKANOさんからプロジェクトのお話をいただいた時、「リアルにロボットを作る」企画とは思いもせず、驚きました。
ホームページを拝見すると、社員の方々がビシッとされていて、俳優のような印象を受けました。クリエイティブな環境で、のびのびとものづくりに向き合える、良い環境が整っている企業なのだろうと感じました。
現在の環境が整うまで10年かかりました。しかし、まだ足りない部分も感じています。
当社は、原発などの発電所で使用されるバルブを扱うインフラ企業です。石橋を叩いて渡るどころか、叩きすぎて割るくらいの丹念さが根付いていました。徹底した安全性を重視するあまり、新しい挑戦には慎重な風潮がありました。そんな環境下で組織変革を起こすのは困難でしたが、トライ&エラーを繰り返しながら、地道に取り組んできました。
困難な変革に、率先して立ち向かってきたんですね。
そうですね。「自分がやるしかない」という使命感みたいな姿勢は、子ども時代に読んだ、漫画『三国志』の影響を受けているかもしれないです。
というのも、親の教育方針により、漫画は買ってもらえずおもちゃは知育玩具のみでした。図書館の本は読んでもいいというルールだったので唯一読めた漫画が『三国志』か手塚治虫作品のみでした。学校ではキン消しやプラモデル、ロボットアニメが流行っていたのに、小1の誕生日プレゼントがオルゴールだったことも……。さすがに嫌すぎて、その時はちょっと怒りました(笑)。
遊びたい盛りにおもちゃがなかったことが、長い時間軸で物事を捉えたり、自ら行動する素養を育んだのかもしれません。
僕と岡野社長のバックグラウンドは、正反対と言えるでしょう。
僕は、幼い頃からゲッターロボやマジンガーZなどのロボットアニメに夢中になり、お年玉は全て超合金玩具に注ぎ込むほどでした。
ある日、「ヒーローの制服は誰が洗濯しているんだろう?」という疑問が浮かびました。「ロボットの基地は誰が建設したのか」「基地では清掃員を雇っているし、交通費はどんな風に支払われているんだろう」など考えていくうちに、ヒーローの裏側で支える人々に興味を持ち始めました。そして、「裏側で頑張っている人」をリアルに描く作品を作ったら面白いのではないかと思うようになりました。
中学からはドラマに傾倒していくんですが、やはり、「裏側で頑張っている人」を、等身大の人間ドラマとして描きたいという想いがますます強くなりました。実は僕の父も製造業を営んでいたのですが、ずっと、映画監督になりたいと夢みていましたね。
社会人になり、『ブルバスター』の前身となる『昭和ダイナマイト』というショートフィルム作品を作りました。MTVで放送された作品では、ラストに毎回「今回戦った分の経費はいくらです」と請求書が映し出されるんですが、その演出がウケたんです。「経済的リアルさは面白い」という確信を得ましたね。そして、「いつかちゃんと長編のコンテンツにしたい」と思うようになり、『ブルバスター』が誕生したんです。
全身全霊で向き合った結果が……、
僕にとってのすべてが、
ブルバスターなんです!(沖野鉄郎)
試行錯誤から
生まれるチャンス
先ほど、社内の環境を変えるのに時間がかかったとおっしゃっていましたよね。
そうですね。大学卒業後に入社してから、設計、原子力発電所や火力発電所の関連業務、製造、工場勤務など、様々な部署を経験しました。ひたすら配属先の仕事を覚え、改善提案を試みましたが、最初は「そんなんせんでええやろ」と一蹴されてしまうことも多かったです。実績で提案の正しさを証明するしかないと思い、行動し続けました。そのうちに少しずつ数名の仲間ができていきました。
10年以上前、社内で利益率の高い案件だけに取引を絞る動きがあったんです。「利益率の低いことをやっても仕方ない」という考えです。しかし、僕としては「利益率の高い案件と合わせて、低くても市場を広げられる案件もあったほうがいいのでは」と考え、積極的に取りにいきました。
その後、東日本大震災が発生し、利益率の高い案件がほぼストップしてしまう状況に。しかし、同時並行で進めていた利益率の低い案件が、思いがけず命綱となりました。
とはいえ実績があっても社内がすぐに柔軟になるわけではありません。上司、部下、時には社外からも反発があり、理解を得るのに時間がかかりましたね。
そういった状況で、心が折れませんでしたか。お一人で大勢と向き合うのは、怖いことでしょう。
確かに、本質的には一人でしたね。しかし、自分の主張は正しいと信じていましたから、折れることはありませんでした。また、震災をうけて社内に少しずつ変化の意識が広がっていきました。外部の役員や柔軟な考え方を持つ人材の採用を積極的に行って新しい風を入れて、ようやく現在に至ります。
ただ事業を継承するのではなく、挑戦し続けている。岡野社長、そしてOKANOさんの姿勢は、作中に登場する害獣駆除会社、NAMIDOMEと共通していると感じます。
NAMIDOMEは、閉塞感のあるコミュニティから抜け出した人たちの寄せ集めです。大企業から独立した社長、会社を潰してしまった過去を持つ経理、前職でセクハラにあった総務……。彼らの敵は、既得権益層です。それが作中でいうところの塩田化学だったり、目に見えない大衆だったりします。
既得権益層が不必要に増長することで、巨大なアメーバのように人々を取り込んでしまう。不当な扱いや状況に抗いたかった人たちも、身動きが取れなくなってしまうんです。
こういった状況は、現実世界でも数え切れないほど起きています。世の中をどんどんダメにしてしまうと分かっていても、大抵の人が目を瞑ってやり過ごしてしまう。結果的に自分たちの生きづらい環境を作ってしまっているのが、日本の現状です。
しかし、NAMIDOMEは決して流されず、OKANOさんのように戦い続けます。
アニメは完結しましたが、NAMIDOMEは中小企業化し、新たな敵と戦うかもしれません。上司や親会社ではなく、社外のもっと大きな存在と対峙していくでしょう。そういう意識を持ち続けていく姿勢が最後の砦なんだと思います。
自分を否定してなにもしないのは、
頑張ってる人に失礼じゃないか。
最低限それができないと、
機械と同じじゃないか。(白金みゆき)
挑戦こそが未来を拓く
大きなものに立ち向かうって、傷付いたり孤独になったり、ものすごくリスクを伴うんですよね。それを避けようとして、多くの人が目先のことにばかり向き合ってしまう。それが日本の停滞の原因ではないでしょうか。
本質的なものづくりには、臆せず立ち向かう心が不可欠です。OKANOさんのような企業を知ることで、「自分だって頑張れる」と感じられる人が増えるでしょう。リストラが当たり前になった現代社会で、若い世代は「自分ごとでやらなければ生きられない」という危機感を持っています。その危機感が、闘う人たちとの共鳴によって使命感へと変わることを信じています。
熱中し続けられる愛と「自分がやらなければいけない」という使命感を持って、ものづくりに取り組む人が増えていくと嬉しいですね。
これから数十年は、まだまだ変化の時代です。攻めの姿勢は当たり前で、失敗もつきものです。守るだけでは確実に負けます。守りに徹しても企業存続はせいぜい百年程度です。
今回の『ブルバスター』プロジェクトしかり、OKANOは一見ハチャメチャな方向に舵を切っていると思われるかもしれませんが、実は着実に売上と結果を出しています。これからも先陣切って攻める姿勢でい続けたいですね。
戦いはこれからだ。
そして、製造業をもっと憧れられる職業にしたいと思っています。そのためには、地味なイメージを一新しなくてはなりません。
今回のプロジェクトは、社内から上がってきた企画でした。「ブルバスター」のPVを拝見し、即「やろう!」とGOを出しました。
従来の製造業を扱ったコンテンツは、視聴者に好印象を与えても、就職先の選択肢には入りにくいのが現状です。しかし本作は、裏側で頑張っている人がたくさん登場して、彼らの人間模様を見守ることができます。温かみがありつつ、泥臭いだけじゃない華やかなやりがいもきちんと描かれています。製造業のNAMIDOMEが沖野の出向を契機にリブランディングするシーンも、見どころの一つです。プロジェクトや今後のアクションを通じて、製造業のイメージを変えていきたいですね。
製造業を含むレガシー的産業や企業、そしてそれを育ててきた地方エリアは、ものづくりの地肩が強い。しかし、見せ方や売れる仕組みづくりに課題を抱えているケースがほとんどです。
クリエイティブには、人の心を動かし、行動させる可能性があります。新しい風を吹かせ、攻め続けることで、日本のものづくりの未来は確実に広がっていくでしょう。
いやあ、話していると、ワクワクしてきます。
挑戦する意識と、それを育む環境づくり。これもインフラ整備の一つと言えるでしょう。僕たちが攻めの姿勢を持ち続けることで、挑戦する意識は伝播し、日本の停滞した現状も変えられるはずです。今回のリアルブルバスタープロジェクトを通して「日本でまだまだ面白いことができるんだ!」と思える人が増えていくと信じています。
今やらなきゃいつヒーローになるんだよ!!!(沖野鉄郎)