「コミュニティナース」は、CNCの代表取締役・矢田明子氏が父の死をきっかけに着想したことに端を発する。大学卒業後コミュニティナーシングの担い手の育成を始め、2017年に法人化。島根県雲南市に拠点を構え、これまで全国の自治体や企業との連携によって活動を進めてきた。
CNCのホームページにはコミュニティナースの概念について次のように記している。
「コミュニティナーシング」という看護の実践からヒントを得て、暮らしの身近なところで元気なうちから『毎日の嬉しいや楽しい』を一緒につくり、心身そして社会的な健康やウェルビーイングに寄与する、誰もが実践できる行為・あり方です。(要約)
この言葉を嚙み砕くと、「近所にいるちょっとおせっかいな世話焼きおばさん、おじさん」をイメージするといいだろう。仮に、幼稚園の送迎で困っているワーキングママと、子ども好きな高齢者がいた場合、コミュニティナースが両者の間を取り持って散歩がてらにお迎えに行ってもらうことを提案するといった接点を生み出していく。互いが助け合うきっかけをつくることでハッピーを生み出すことが、ナースたちによって生み出される価値といえる。
「ナース」の言葉から医療や介護の領域を想像しがちだが、実際は「ナーシング(他者の健康や成長を支える行為全般を指すありかた)」の考え方に基づいて住民の心と体、あるいは社会的な健康づくりに関わっていく。看護資格の有無に関わらず活動ができ、対象の住民も看護や介護が必要な人に限らない。
CNCの活動には、かつての日本にあったご近所づきあいのように、互いが程よい距離で気にかける「おせっかい」な関係が根源に息づいている。